好きなものを職業に… – 染師・喜納更紗

伝統工芸

博多にある節信院で個展を訪れた際に、染め物の工程を紹介するビデオが流れていました。その工程で染め物に興味が湧いてしまい、今回その個展で販売されていた染め物の染めを担当した染師、喜納更紗さんにお話をお伺いしてきました。

Interviewer: 大学を卒業してから染師として活動されているということですが、学校では染色を学ばれたんですか?

Sarasa Kino: はい。学校に染織造形という学科があって、4年間勉強しました。

I: そこでは染織と織物に関しての授業を受けるということなんでしょうか?

S: 日本の代表的な技法をいくつか習って、その技法を用いた作品を作るという感じでした。

I: 何が一番面白かったですか?

S: 大学3年のころ、染めから縫製まで自分たちでやって浴衣を作るという授業があって。帯も織りました。その時に初めて型染めをしたんです。それまでも色々な課題があって色々な物を作っていたんですけど、その浴衣を作った時にやっと自分の納得のいく物ができたんです。それは面白かったですね。

I: 学校で学んだことを職業にしようとう思った時に、染織と織物で染織を選んだ理由はなんでしょう?

S: 元々、柄物が好きなんです。布だけではなく、絵も。自分の好きな柄物について勉強したい、自分で柄物をつくりたいという思いから、高校で大学を決める時に染織の学科がある所を目指したんです。なので、大学時代も染織の道へ進みたいという気持ちでした。

I: 柄を好きになるきっかけとは何だったんでしょう?

S: 両親が柄物が好きということもあって、絨毯や着物など柄のあるものが身近にたくさんあったんです。子供の頃からそれを眺めるのがすごく好きで。身近にたくさんあったから、好きになったのかもしれないですね。(笑)

I: 染織にはたくさんの技法があると思うんですが、どのような染色をされているのでしょう?

S: 白い生地を「型染め」という技法を使って染めています。和紙に柿渋を塗った渋紙というのがあるんです。その渋紙をデザインに沿って切り抜いて型紙をつくり、その型紙を使って染めていきます。

I: 型染めを選んだ理由は?

S:津島さんから、型染めで作品を作りたいという話しを聞いて。作品作りに関わらせて頂いたことが大きなきっかけです。その際に材料や道具が揃ってしまったので、これはもう型染めをやるしかないなと。大学を卒業してから何がしたいのか分からなくなってた時期もあったんですけど、それで心が決まった部分はあります。

他にも染めの技法はいっぱいあるんですが、家でやるとなると難しい物が多くて。技法によっては下水道に流せない染料を使うものがあったり、場所をとる機械が必要だったり。でも、型染めなら家でもできるなって。

全ては手作業で

I: 型染めについて詳しくお聞かせ頂けますか?

S:

ハンカチなどの小さい物だと木枠を使って、大きい物だと吊って染めています。

布をピンと張らないといけないんですが、木枠だと大きさの限界があって。布を吊ると紐で調整することができるので大きさに縛られないのです。

型染めって、まずは木板に貼った布の上に型紙をのせ、その上からからヘラを使って糊を塗るんです。

そうすると型が切り抜かれている部分の生地にだけ糊が乗っている状態になります。マスキングしているような感じですね。糊を塗った状態で型を外して色を入れると、糊を塗った所は色が乗らないので白になって、糊を塗っていなかった部分は色が染まるんです。

糊を塗った後は完全に乾かして、張木と伸子という道具を使って布を吊るします。道具を使うことで布をピンと張ることができるんです。それから、染料のにじみを防ぐ地入れ液というものを布の表と裏から生地に塗ります。

色を入れるときは、素早く乾いてしまわないように塗っていきます。ムラがでてしまうので。細かいデザインや色をいくつも入れる場合は色々な大きさの刷毛を使って細かく色を入れていきます。

染めたあとは、一度乾かして2度塗りをします。

それが乾いた後に、染料の部分には定着剤というものを塗り、1時間ほど放置です。

その後、水洗いで糊と染料を落とし、退色を防ぐための薬品を入れたお湯に20分ほどつけ、乾燥させると完成です。

型染め作品-暖簾(のれん)鳥-製作工程

天候に左右される作業も

I: 糊を乾かす時間はどのくらいなのでしょう?

S: 季節やその日の気候によって様々です。乾燥している時期の方が乾きやすいですね。30分ほどで乾く日もあります。ただ、湿気がある夏や雨が降る梅雨は乾きづらいです。

糊をしっかり乾かさないと色が滲んでしまったりするので、一つの作品を乾かしている最中に他の作品に取りかかっています。

糊をぬって糠をその上にのせることもあります。糠を使うことで、凹凸をはっきりさせたり、べたつきをなくすことができるので。

糊ってどのようなものなのですか?

ペースト状の糊で、餅米と糠などを混ぜてつくられた物を使っています。なので色も真っ白ではないんです。職人さんによっては見えやすいように顔料を混ぜて糊を青くしたりする方もいます。

I: 生地についてる糊って簡単に落ちるんですか?

S: はい。水に浸けておくと糊はふやけてくるんです。ゆすり洗いをしてあげると糊がおちて、マスキングしていた部分が浮かび上がってくるんですよね。

I: グラデーションはどのようにして染めているのですか?

S:グラデーションにする場合には薄い色や濃い色を作って、薄い色から順番にひとつずつ刷毛で染めています。型の目を刷毛で塗る場合にはグラデーションなど何でも自由にできるんです。

I: ひとつ、ひとつの工程が手作業なんですね。

S: はい。でも、型は壊れてしまうまで何度も使えるので。色違いもできちゃいます。

I: 型紙を作るのって大変じゃないですか?

S:

デザインカッターで切り抜くので、細かいデザインになればなるほど時間はかかってしまいます。肩こりしたり(笑)。でも、デザインが細かすぎると糊が乗らなくなってしまうので、ある程度の太さは必要なんです。

糊を固めにしたり、柔らかくすることである程度の調節はできるのですが、ミリ単位とかになってしまうと厳しいですね。

I: 糊とか染料にも色々あると思うのですが。

そうですね。職人さんによっては全て手作りされている方もいらっしゃいます。私の場合は染料屋さんがあるのでそこで購入した物を使っています。

染料には天然染料と化学染料とあるのですが、色が一定でムラが出難い化学染料を使っています。染料は粉なんですけど、水に対して何パーセント染料を使うかで色が決まるんです。天然染料だと色が天気や温度に左右されることもあるので。

糊に関しては購入した物に石灰や水を混ぜて、固さを調節して使っています。あと塩も。塩を入れることで防腐剤の代わりになるんです。入れなくても良いんですが、夏は入れた方がいいですね。

I: 染師として活動を始めて1年以上になりましたが、どうですか?

S: だいぶ面白くなってきました。最初の頃は失敗することが多くて、なんでだろうと悩むことが多かったんです。今はそういった事が少なくなってきて、次は何を作ろうと悩むことが楽しくなってきました。

I: 染織は伝統工芸のひとつだと思うのですが、今と昔で大きな違いは何でしょう?

S: 昔はやはり着物を染めるというのが主だったのですが、今は着物を着る人が少なくなったので、着物を染めるだけでは暮らしていけないですよね。着物を染めていた職人さんたちが、たくさん辞めてしまいました。なので今と昔では「何に染めるのか」ということが一番変わったのではないかと思います。

I: 最近見かける染め物はポップな柄の物が多いなと思うんですが。

S: そうですね。現代風にアレンジした物とかを染めていらっしゃる方が多いですね。

I: そういえば、更紗という染め物があると聞いたんですが。

S: 布の名前ですね。ジャワ更紗とかペルシャ更紗とか。

I: 更紗さんのお名前は本名ですか?
S: 本名です。(笑)

I: すごいですね。更紗さんで染織家って。

S: 名前に引っ張られたのか分からないんですけど(笑)。気づいたら染織家になってましたね。

I: お名前を拝見した時に、雅号なのかなと思ってたんです。

S: よく言われるんですけど、本名なんです(笑)。

I: 更紗さんはどのような作品をつくられているんですか?

S: 何か身につけられるものをつくりたくて、ストールやハンカチなどを作っています。植物をモチーフにした柄を考えて染めたりしている最中です。果物や庭に咲いている花など身の回りのものをデザインに使うことが多いです。

I: どのように染める色を決めていかれるんですか?

S:私は色鉛筆を使って絵を描いてみたり、フォトショップを使って色を変えてみたりしています。葉っぱとかだと緑のまま使ったりすることも多いですが。

I: では最後に、この先こういった物を作ってみたい、こうなりたいとかってありますか?

S: 色々な布に染めてみたいというのはあるんですが、洋服を作ってみたいというのもあります。今は化学染料を使っているので植物を使って染めてみたいというのもありますね。あとは、いつか自分の工房を持ちたいです。

I:工房ができたら是非呼んでんでください!今日はありがとうございました。

S: はい。自分の工房を持てるように頑張ります。

最後に

更紗さんの染めものって、優しい雰囲気をまとっているものが多いんです。力強く見える色合いの中にもふんわりとしたものがあるという。今回ゆっくりお話をさせていただき、その理由がわかった気がします。これから先、更紗さんからどのような作品がつくりだされるのか楽しみで仕方がありません。

染師・喜納更紗さんの作品は下記のリンク先でチェックしてみてください。

instagram: https://www.instagram.com/sara_y_a/

Shop: https://somenosaraya.stores.jp/

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