食器洗浄機/乾燥機もOK! 使い手に寄り添い、伝統を次代へ受け継ぐ「j cocomo(ジェイココモ)」の漆器。

伝統工芸

「漆器」と聞くと、「高級」で「手入れが大変」な赤や黒のお椀やお盆をイメージする方も多いのではないかと思います。私自身そうでした。そんなある日、外国の友人が「日本の漆器を使ってみたいんだよね。」と。その日から「漆器」という2文字が頭の片隅に。そんな中、たまたま知人の紹介で「漆器」を扱う会社が福岡にあることを知りました。それが「j cocomo」との出会いです。

「j cocomo」のショールームにお邪魔すると、今までの「漆器」のイメージとは違ったカラフルなカップや皿、スプーンなどのアイテムが並んでました。「赤と黒以外の漆器?」、「なんで?」フツフツと沸き上がる質問。そこで後日、ゆっくりお話を聞きに行ってきました。

食器洗浄機/乾燥機もOKな漆器

K:「j cocomo」の製品って、今まで見てた「漆器」とかなり違っててビックリしました。

j cocomo: 従来の漆器というと高価で、お正月・節句・七五三など日本の特別な行事の時のみに使われることが多かったんです。美術的工芸品で観賞用のイメージですね。だから、365日、日常的に使える漆器を作りたかったんです。

K: 漆器って赤と黒で、お椀とかだけだと思ってました。

j: 今は赤と黒以外にもたくさんの色があります。ここのピンクや青も、使用しているのは天然漆です。「j cocomo」の商品は私がデザインして、現在は主に福井の漆職人さんに一つ一つ手作業で作ってもらっています。

実用性を追求した「漆器」

K: 従来の漆器と一番違う部分は?

j: 商品を作る時に一番重視したポイントは、シンプルで洗い勝手が良いということ。食洗機もOKです。従来の漆器だと水洗いの後はすぐに拭かなければならなかったんですね。でも現代人は忙しいから、普段使われてる他の器のように洗えないと。それに、飲食店で使って頂くには食洗機ってマストですよね。

重ね置きができる!

j: あと、「j cocomo」の漆器は食器棚にそのまま重ねて収納してもらえます。従来の漆器だと変色したり蒔絵の部分に傷がつかないよう、重ね置きする際には器と器の間に布を敷いたりする必要があったんです。そこを、蒔絵の装飾をつけなかったり傷がつきにくい漆塗料を使うことで、丈夫で重ね置きができる漆器にしたんです。

K: 重ね置きができないと、広いスペースが必要になりますもんね。

j: そうなんです。日本人の生活スタイルって大家族から核家族化され、一軒家からアパートへ住む人が増えました。暮らしのスタイルが変わる中、器に求められているのは収納のしやすい形、素材,軽さなんです。どんなに器が好きな人でも購入の際のポイントは収納。色や形が好きで買った器も、使い勝手が悪ければ食器棚の奥に置かれてしまう。重ね置きができないと、食器棚の取り出しやすい場所には置いてもらえない。日常的にスタメンとして器を使ってもらうには、使い勝手がよく、収納しやすくなければダメなんですよね。

買ってもらえる商品を作らないと産業は残せない

K: 従来の漆器に比べるとお値段もお手頃ですよね。

j: 漆を塗る前の素材のことを木地というのですが、「j cocomo」の木地は木粉と樹脂を混ぜ合わせて金型で成型してつくられます。100%木で作った木地だとどうしても値段が高くなってしまうので。
それに漆の産地にはそれぞれ特徴があるんですが、福井は昔から家庭用漆器や飲食店向けの業務用漆器を生産していたので、洗いに強くお手頃な値段の漆器を作るのが得意なんです。購入してもらうには、いつでも価格がお手頃に買える漆器でないと。普段使いの器に数万も出せないですよね。それに、購入者がリピーターになってくれれば、漆の職人さんへの注文が増える。そうすれば漆の職人さんが食べていけて、少しでも漆の産業の延命措置になるのでないかという思いもあって。

漆器を売る、その熱い思い

K: 他の伝統工芸同様、漆の産業も減っていっているんですか?

j: 減っています。作り手さんも、売り手さんも。
実家の家業を通して、倒産していく売り手や作り手さんを沢山見てきました。その中で私が何をやれるかって考えた時に、欲しいと思ってもらえる商品を職人さんに作ってもらって私が頑張って売ろうって。それで「j cocomo」を立ち上げたんです。

K: ご実家も漆関連のお仕事をされてたんですか?

j: 祖父の代から漆製品を売る会社をやっていました。漆器専門の店舗とかもあって。今はなくなってしまいましたが。

K: では、漆器はずっと身近なものだったんですね。

j: もう、生まれたときから。大きな食器棚が3本家にあって、その1本は全部漆器。いろんな産地から漆器のサンプルが売って欲しいと持ち込まれてました。そのサンプルを家で使って試しては「これはおしゃれだけど使いづらいな」とか「この形は洗いづらいわね」といった会話がとびかってました。

K: それはもう、今の仕事に直結ですね。

j: そうですね。実家の恩恵もあって「j cocomo」には漆職人さんとの独自のネットワークがあります。だから、デザンした商品に適した技術がある産地を選んで漆器を作ってもらえるんです。通常、漆の世界では産地発信のものづくりが大半ですが、「j cocomo」のように製品ごとに産地を選ぶことができる漆ブランドは他にはないですよね。

K: 最後に一つ。今があって未来があると思うんです。この先に見えているもの、目標みたいなものってなんでしょう?

j: 漆産業の衰退を止めたい。そのために、商品を広めたいです。漆器を使ったことがない人たちにも漆器を使って欲しいなと。個人的には400年程前に漆製品が海を渡ってヨーロッパの人を魅了した時のように、外国の人が熱狂する様な漆製品を作ってみたい。そして、その商品を海外で売ってみたいと。それはきっと日本のため、文化継承にも繋がると思うから。

最後に

従来の漆器が美的工芸品だとしたら、「jcocomo」の漆器は実用品。漆器にも様々なカタチがあることを知りました。従来の漆器についても本当は色々とお話を伺ったんですが、それはまた別の機会に。今回インタビューをさせて頂いた中で、沢山の人に使ってもらいたい、という熱い思いがフツフツと伝わってきました。今後の商品展開が本当に楽しみです。

「j cocomo」では月に一度、オープンデーを開催されていて、どなたでもショールームにて商品を手に取って、見て頂くことができます。是非一度、実際に目にして頂きたいと思います。

「j cocomo」

web: http://j-cocomo.jp
Instagram: https://www.instagram.com/jcocomo_official/
facebook: https://www.facebook.com/pages/jcocomo-CoLtd/657962157562853

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